ベッドに横たわる女性。西洋絵画で繰り返されてきた姿ですが、似たポーズでも同じ絵には見えません。こちらを見ているのか、背を向けているのか。女神なのか、同時代の人物なのか。身体の周囲にあるものまで見ると、変化がはっきりしてきます。

今回は、ティツィアーノ、ベラスケス、アングル、マネの4作品から、横たわる裸婦像の系譜をたどります。受け継がれるのはポーズだけではなく、見る人との関係です。一直線の進歩や模倣の順番ではなく、残したものと変えたものを比べてみましょう。

この記事はAIが執筆しています。

この記事でわかること
・4作品の視線と場面を比べる
・神話と同時代の人物像の違い
・持ち物だけで意味を決めない見方

ティツィアーノ――女神は、室内でこちらを見る

ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》1538年、油彩・カンヴァス。ウフィツィ美術館。
ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》1538年、油彩・カンヴァス。ウフィツィ美術館。 パブリックドメイン。出典:Wikimedia Commons

《ウルビーノのヴィーナス》(1538年)では、女性が身体を横たえ、こちらへ顔を向けています。後方には二人の女性と衣装櫃。手前には眠る犬。何もない空間に理想的な身体だけを置くのではなく、生活の気配をもつ室内と組み合わせていることがわかります。

ウフィツィ美術館は、花や犬、衣装などを婚姻と結びつけて説明し、犬を夫婦の貞節の参照としています。「ヴィーナスだから現実の生活とは無関係」とは言い切れません。女神の呼び名、部屋、持ち物が重なって、人物の見え方を作っています。[1]

ベラスケス――背中と鏡が、視線を遠回りさせる

ディエゴ・ベラスケス《鏡の前のヴィーナス(ロークビーのヴィーナス)》1647〜51年、油彩・カンヴァス。ナショナル・ギャラリー。
ディエゴ・ベラスケス《鏡の前のヴィーナス(ロークビーのヴィーナス)》1647〜51年、油彩・カンヴァス。ナショナル・ギャラリー。 パブリックドメイン。出典:Wikimedia Commons

《鏡の前のヴィーナス》(1647〜51年)では、人物が私たちに背を向けています。顔を見るには、キューピッドが支える鏡へ目を移さなければなりません。その鏡像も鮮明ではなく、身体はよく見えるのに、顔を捉えたという確かさは得にくい。見る行為そのものに、ひと手間が加わります。

ナショナル・ギャラリーはこの作品を、鏡を見るヴィーナスと、横たわるヴィーナスという二つの型を組み合わせたものと説明しています。既存の型は、そのまま守るだけのものではありません。向きや小道具を組み替えることで、新たな見え方を作れるのです。[2]

アングル――「異国の室内」は、誰が想像したものか

ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《グランド・オダリスク》1814年、油彩・カンヴァス。ルーヴル美術館。
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《グランド・オダリスク》1814年、油彩・カンヴァス。ルーヴル美術館。 パブリックドメイン。出典:Wikimedia Commons

《グランド・オダリスク》(1814年)も背を向けた人物ですが、顔はこちらへ振り返っています。ターバン、扇、青い布、長く続く背中の線。身体の向きだけでなく、周囲の品物が、見る人に「どんな場所か」を想像させています。ルーヴルの作品記録では、孔雀の羽の扇や寝台の布などの細部も確認できます。[3]

ここで描かれた「異国」を、現地の暮らしの正確な記録として受け取ることはできません。ロサンゼルス郡立美術館は、アングルのオダリスクを、西欧の想像が作った東方の女性像として説明しています。裸体をどんな設定で見せるかには、画家の造形だけでなく、見る側の文化的な期待も関わっています。[4]

マネ――ヴィーナスの構図に、同時代の人物が現れる

エドゥアール・マネ《オランピア》1863年、油彩・カンヴァス。オルセー美術館。
エドゥアール・マネ《オランピア》1863年、油彩・カンヴァス。オルセー美術館。 パブリックドメイン。出典:Wikimedia Commons

マネの《オランピア》は1863年の制作、1865年のサロン出品です。ベッドに横たわり、こちらを見る人物という構図は《ウルビーノのヴィーナス》を思い出させます。しかし、花束を持つ女性、足元の黒猫、装身具などを見ていくと、画面の読み方は変わってきます。

オルセー美術館は、マネがティツィアーノやゴヤ、アングルらの表現を参照しつつ、当時の娼婦という現代的な主題を描いたことを説明しています。女神という理想化された題材の枠を、同時代の社会へと動かしたこと、そして描き方の双方が、サロンでの強い反応につながりました。[5]

犬と猫の違いだけで、絵を決めない

二作を並べると、姿勢と室内という共通点の中で、動物や人物の配置が変わっていることに気づきます。ただし、「犬なら貞節、猫なら娼婦」と、動物一匹であらゆる絵の主題を決めるわけではありません。ウフィツィが説明する犬の意味と、オルセーが説明する《オランピア》全体の主題は、区別して確かめたいところです。

読み取りの注意
見る人への顔の向け方、手の位置、服飾、ほかの人物との関係。似た骨格が残っているからこそ、小さな違いにも目が向きます。伝統を捨てたというより、伝統を見える形で呼び起こしながら、その意味を動かした作品として考えると、比較の面白さが増します。

一本の家系図より、「何を変えたか」を追う

見方のヒント
この4点だけで、横たわる裸婦像の歴史を網羅できるわけではありません。また、並べた順番がそのまま、画家同士の直接的な影響関係を証明するわけでもありません。オルセーが示すように、マネの参照先は一枚に限られず、複数の作品や主題が交わっています。

比較するときは、三つの点を試してみてください。顔と視線はどこへ向かうか。身体はどんな場面に置かれるか。周囲の人物や持ち物は何を示すか。似たポーズの絵を見つけたとき、「また同じだ」から「ここを変えたのか」へ。一枚ごとの選択が見えてくるはずです。

参考資料

[1]Uffizi Galleries:Titian, Venus of Urbino。1538年、油彩・カンヴァス。犬や室内の婚姻に関する解釈。

[2]National Gallery:Velázquez, The Toilet of Venus(The Rokeby Venus)。1647〜51年、油彩・カンヴァス。二つのヴィーナスの型と鏡像。

[3]Musée du Louvre:Ingres, Une odalisque, dite La grande odalisque。1814年、油彩・カンヴァス。1819年サロン出品。

[4]LACMA:Ingres’s Odalisque。ルーヴルの1814年作とLACMAの約1830年の別作を区別し、前者のオリエンタリズムに関する説明を参照。

[5]Musée d’Orsay:Manet, Olympia。1863年、油彩・カンヴァス。1865年サロン出品、複数の参照作品と主題。