描いている途中の風景が、ある日なくなってしまう。そんなとき、画家はどうするのでしょうか。

クロード・モネがポプラの連作に取り組んでいたとき、モデルとなる木々に伐採の予定が持ち上がりました。そこでモネは、制作を続けられるよう、お金を払って伐採を待ってもらいます。「絵のために木を買った」と語られるエピソードです。

この話から、同じ風景を何度も描いたモネのまなざしをたどってみましょう。私が作品解説を担当した『JTBのカレンダー モネで旅する12カ月 2027』も、あわせてご紹介します。

この記事は動画の内容を元にAIが執筆しています。

描き終わるまで、ポプラを切らないで

1891年、モネはジヴェルニー近郊のエプト川沿いで、ポプラを繰り返し描きました。ところが、その木々を村が競売にかけることになったのです。

メトロポリタン美術館の解説によると、モネは地元の木材商にお金を払い、制作が終わるまで木々を残してもらいました。「並木を買った」という言葉の背景には、こうした取り決めがあります。連作を完成させるには、同じ場所へ戻り、変わっていく景色を見続ける時間が必要だったのでしょう。《4本の木》の解説(メトロポリタン美術館)

フィラデルフィア美術館によれば、モネは春から制作を始め、伐採を延期してもらうことで夏から秋にも描き続けました。舟から視点や時刻を変え、20点以上の作品を制作しています。光が変わるまで、ほんの数分しか描けない場合もあったそうです。ポプラ連作の解説(フィラデルフィア美術館)

モネは、描くための「時間を買った」とも考えられます。これは出来事から読み取れる解釈ですが、連作へのこだわりが伝わってくる話です。

三本の木を見ていると、光が見えてくる

今回の主役は、フィラデルフィア美術館の《ポプラ並木、秋の3本》です。カレンダーの10月には《ポプラ並木、3本の薔薇色の樹、秋》という表記で掲載されています。

まず、三本の幹に目を向けてみてください。細長い幹は画面の上へ伸び、水面の反射にも縦の線が続きます。その奥では、並木がゆるやかに曲がりながら遠ざかっています。まっすぐな線と、奥へ流れる曲線。この組み合わせが、風景にリズムをつくっています。

そして、葉や幹に置かれたピンクや黄色と、青みを帯びた空や水面。木の名前が分かったあとにも、色の関係を追う楽しみが残ります。

連作の別の絵と見比べると、その違いがさらに見えてきます。葉の色、幹の明るさ、川面の反射。同じモティーフを繰り返すことで、一枚では気づきにくい変化に目が向くのです。

《積みわら》《ルーアン大聖堂》《睡蓮》にも、同じ対象に繰り返し向き合う姿勢が見られます。例えば《ルーアン大聖堂》の解説では、光や空気の変化に応じてカンヴァスを替え、後にアトリエで仕上げたことが紹介されています。その場の一瞬を追いながら、絵として時間をかけて整えていたのですね。

身近な風景でも、同じ窓から朝と夕方に外を見たり、晴れた日と曇った日を比べたりすると、色の違いに驚くことがあります。描くものや写真の題材を探している方も、いつもの場所をもう一度見るところから始められそうです。

夜明けから夕暮れへ、モネとめくる12カ月

『モネで旅する12カ月 2027』では、毎月一枚ずつ、モネの作品を楽しめます。掲載月と作品名は版元の商品案内に基づいています。

月ごとに景色をめくりながら、好きな色や、何度も目が戻る場所を探してみてください。作品名や描かれた場所を覚えることに加えて、自分の見方を見つける楽しみがあります。

一枚の絵と、一カ月暮らしてみる

今回のカレンダーでは、収録作品の解説を担当しました。カレンダーには、作品の背景や見どころを紹介する解説を添えています。

カレンダーなら、一つの作品と一カ月、同じ部屋で過ごせます。最初に目を引いた色の隣に、数日後、新しい色を見つけることもあるかもしれません。朝、予定を確認するとき。夜、一日の終わりに眺めるとき。同じ絵でも、こちらの時間や気分によって目に入るものは変わります。

毎月の予定を書き込みながら、モネの光を少しずつ味わう。2027年を、そんな一年にしてみませんか。

『JTBのカレンダー モネで旅する12カ月 2027』の詳細・購入案内

参考資料・作品情報