フェルメールの室内画を見ると、私には少し不思議な感覚があります。描かれたものの質感は、そこに本当にあるように感じられる。それなのに、部屋全体はシルバニアファミリーのような、小さな箱庭にも見えるのです。

その感覚が腑に落ちたきっかけが、カメラ・オブスクラという装置の存在でした。もしかしたらフェルメールは、肉眼で目の前の部屋を見るだけでなく、レンズを通して映し出された世界も見ていたのではないか。そう考えると、絵を見るときの問いがひとつ増えます。

この記事はAIが執筆しています。

カメラ・オブスクラ(静岡県立美術館 カナレットとヴェネツィアの輝き より)

この記事でわかること
・カメラ・オブスクラの投影の仕組み
・フェルメール研究でわかることと限界
・光の描き方と自分の見方を比べる

光で風景を映す仕組み

カメラ・オブスクラは、ラテン語で「暗い部屋」を意味します。暗くした部屋や箱に小さな孔を開けると、外から入った光によって、向かいの面に外の景色が上下逆さまに映ります。孔にレンズを取り付け、より明るく鮮明な像を得る形式もありました。鏡を組み合わせて、机の上などに像を映す装置もあります。

物体の上側から来たピンクの光と下側から来た青の光が、小さな孔で交差し、奥の面に上下逆の像を作る模式図。
模式図:当ブログ制作。孔を通る光の直進と倒立像のみを示す。レンズ・鏡を使う形式は省略し、寸法は実物の再現ではない。原理の参考:国立科学メディア博物館。

投影と写真の違い
基本となるのは、外の世界を平面に投影する仕組みです。その像を眺めたり、紙に写し取ったりすることはできますが、装置だけで写真のように像を保存するわけではありません。私たちが使うカメラにつながる技術でも、フェルメールの時代に写真撮影ができた、という意味ではないのです。装置の成り立ちは、英国の国立科学メディア博物館の解説で確認できます。[1]

アムステルダムの研究が示す可能性

では、フェルメールは実際に使ったのでしょうか。ここは、可能性と確認できている事実を分けておきたいところです。

フェルメール《手紙を書く女》。黄色い上着の女性が机に向かい、こちらを見る。
ヨハネス・フェルメール《手紙を書く女》1665年頃、油彩・カンヴァス。米国ナショナル・ギャラリー、1962.10.1。Courtesy National Gallery of Art, Washington。CC0/パブリックドメイン。出典・作品情報。

アムステルダム国立美術館は2023年、グレゴール・J・M・ウェーバーによる研究を紹介しました。注目されたのは、デルフトにあったフェルメールの家の隣のイエズス会施設です。そこで活動した、画家でもある司祭イサーク・ファン・デル・メイの素描に、カメラ・オブスクラの像に特徴的な表現が見られるとされました。ウェーバーは、こうした近隣のつながりや絵の光の表現から、フェルメールが装置に触れ、着想を得た可能性を論じています。[2]

美術館の発表は光学装置からの影響を強く支持しています。ただし、そこから「どの作品を、どの装置で、どのように描いたか」まで確定したと受け取ることはできません。ロンドンのナショナル・ギャラリーも、フェルメールが装置を試した可能性という慎重な説明をしています。[3]

画家が何を選んだかを見る

装置の話を知ると、絵がそのまま投影像をなぞったもののように思えるかもしれません。けれども、2022年に発表された米国ナショナル・ギャラリーの研究では、フェルメールが光沢のない布にも丸い光の表現を用いたことが指摘されています。研究者たちは、装置の見え方をそのまま再現する以上の、画家自身による選択に目を向けています。[4]

《手紙を書く女》の黄色い袖と白い毛皮の部分。黄色い布に丸い明るい筆触がある。
《手紙を書く女》の袖の部分。上の全図と同じNGA公開画像から公式IIIFで部分取得。色・形の改変なし。Courtesy National Gallery of Art, Washington。CC0/パブリックドメイン。原画像・作品情報。

何をはっきり描き、何を曖昧にするか。光をどこに置き、視線をどこへ導くか。道具を使った可能性を考えることは、そうした絵の工夫を見つける入口にもなります。

絵の前から日常へ

感想と史実を分ける
私にとっての箱庭のような感覚も、カメラ・オブスクラの使用を証明するものではありません。レンズ越しの世界だったのかもしれない、という私自身の仮説です。

身近なところでは、目の前の部屋を眺めたあと、同じ場所からスマートフォンで撮ってみるとどうでしょう。写真には何が入り、何が外れたか。撮った画面では、どこに最初に目が向くか。自分が部屋の中で動きながら見ていたときとは、どんな違いがあるでしょうか。

そして、もう一度フェルメールの絵を見る。私はこの部屋を、どこから眺めているのだろう。画家の道具をめぐる疑問は、絵を見る自分の位置や、日常の見方を問い直すことにもつながっていきます。

参考資料

[1]国立科学メディア博物館 カメラ・オブスクラの仕組みと歴史

[2]アムステルダム国立美術館 ウェーバーの研究紹介(2023年1月6日)

[3]ナショナル・ギャラリー 用語解説 Camera obscura

[4]JHNA フェルメールの制作過程に関する研究論文(Giffordほか 2022年)