人の上半身に馬の胴体をもつケンタウロス。ライオン・山羊・蛇が一体になったキマイラ。どちらもギリシャ神話の混成の生き物ですが、美術の中で与えられる役割は同じではありません。戦う者、教える者、抑えられる者。4つの作品で、その違いを見ていきましょう。
この記事はAIが執筆しています。
- ケンタウロスとキマイラの姿の違い
- ケイロンが「先生」として描かれる理由
- 4作品で注目したい手・体・視線の動き
ケンタウロスとキマイラは、何が違う?
ケンタウロスは人と馬の姿を合わせもつ種族の呼び名です。その一人ケイロンは、クロノスとフィリュラの子とされ、英雄アキレウスの師として知られます。馬の体だからといって、いつも荒々しい敵役とは限りません。
一方、キマイラはライオン・山羊・蛇の特徴をもつ怪物。アポロドロス『ビブリオテーケー』ではテュポンとエキドナの子とされ、翼のある馬ペガサスに乗ったベレロフォンに倒されます。まずは、この二つの物語を分けておきましょう。

①ボッティチェリ――髪をつかむ女性は誰?
《パラスとケンタウロス》では、画面右の女性が右手でケンタウロスの髪をつかんでいます。左手に持つのは長い柄の武器。ケンタウロスも弓を携えていますが、ここで目を引くのは武器同士の衝突より、頭と手の接触です。
女性は題名のとおりパラス・アテナと解釈される一方、古代ローマの女戦士カミラとする説もあります。ウフィツィ美術館は、徳が激しい情念を抑える寓意として紹介しています。人物の同定や寓意は、画面に見える事実と区別して読む必要があります。

白い衣服には、メディチ家に結びつく三つの輪の文様も見えます。神話の姿を借りながら、制作当時の人々の世界にもつながっているのです。
②パルテノン神殿――婚礼が乱闘になる
ケンタウロスたちがラピタイ族の婚礼で酒に酔い、花嫁に乱暴しようとしたため争いが起こる。これがケンタウロスとラピタイ族の戦い、ケンタウロマキアです。アポロドロスの物語では、花婿ペイリトオスと英雄テセウスが戦います。
パルテノン神殿の南側メトープ第27番は、この争いを彫った大理石の浮彫です。左の人間はケンタウロスに腕を回し、馬の体は大きく反り返っています。頭部が失われていても、脚の踏ん張りや胴体のねじれから、組み合う力が伝わります。

③ケイロンとアキレウス――馬の体をもつ先生
ヘルクラネウムのバシリカから出土した壁画では、同じ半人半馬の姿が、まったく違う場面に現れます。ケイロンは後脚を折って座り、少年アキレウスの傍らで竪琴に手を伸ばしています。少年は楽器を支えながら、師の顔を見上げています。
相手を押さえつける腕ではなく、楽器へ導く腕。闘争の彫刻と見比べると、姿が似ていても、人物の役割は動作と関係から読み取るものだと分かります。ケンタウロスの姿を見ただけで「野蛮さの象徴」と決めてしまうと、この穏やかな場面を読み損ねます。

ケイロンには悲しい結末もあります。アポロドロスによれば、ヘラクレスの矢が誤って膝に刺さり、不死の身でありながら癒えない傷に苦しみました。教える姿だけでなく、傷つく賢者として語られる人物でもあります。
④アレッツォのキマイラ――三つの動物を探す
紀元前400年頃のエトルリアの青銅像《アレッツォのキマイラ》では、まずライオンの体を見つけ、次に背中から突き出た山羊の頭、最後に蛇となった尾へと目を移してみましょう。別々の動物の特徴が、一つの体につながっています。
像の前脚には、エトルリアの神ティニアへの奉納を示す銘文があります。また、身を低く構える姿から、もとはベレロフォンやペガサスと組み合わされた群像だった可能性が指摘されています。今は見えない相手の位置を考えると、像の動きがいっそう気になってきます。

現在の蛇の尾は1785年に補われたものです。山羊の角にかみつく位置は古代の形をそのまま残したものではありません。古い彫刻を見るときは、現存する部分と復元された部分を分けて考えましょう。
姿を覚えたら、次は動作を見る
ケンタウロスとキマイラは、体の組み合わせで見分けられます。でも、作品の読みどころはそこで終わりません。髪をつかむ手、組み合う腕、竪琴へ導く手、相手を迎え撃つ姿勢。動作に注目すると、それぞれの物語が見えてきます。
次に出会う神や英雄も、持ち物と相手との関係から探してみてください。ギリシャ神話大全では、作品を読む手がかりを人物ごとに紹介しています。
神話の出典:アポロドロス『ビブリオテーケー』1.2.4、2.3.1–2、2.5.4、摘要1.21。作品情報は各画像下のリンクを参照。
アイキャッチ:Sailko撮影のキマイラ写真とボッティチェリのパブリックドメイン画像を編集配置し、案内役と文字を追加。編集画像はCC BY-SA 3.0。元画像の出典は上記参照。

