怪物の謎は解けたのに、自分が誰なのかは知らなかった。ギリシャ神話のオイディプスは、知恵でテーバイを救いながら、自らの出生を知ることで王の座を失う人物です。古代の杯とアングル、モロー、フュースリの絵画を見比べると、勝利の場面の先に続く悲劇が見えてきます。
この記事はAIが執筆しています。
- 実の親と育ての親を取り違えたことが、神託とどう結びつくか
- スフィンクスの謎かけを描いた杯と絵画の違い
- 後半生のオイディプスを、身振りと家族の配置から読む手がかり
オイディプスの実の親と、育ての親
テーバイ王ラーイオスとイオカステの息子は、父を殺すという神託を恐れられ、赤子のうちに捨てられます。救われた子が、コリントス王ポリュボスとその妻に育てられたオイディプスです。ソフォクレス『オイディプス王』では、養母の名はメロペー。本人はこの二人を実の親だと信じています。
のちに彼が結婚する相手は、実母イオカステでした。以下では、二人の子をエテオクレス、ポリュネイケス、アンティゴネー、イスメーネーとする伝承に沿って読みます。養母や子どもたちの母の名には異伝があるため、図は神話のすべての説をまとめたものではありません。

父を殺したのは、神託から逃れようとした道の途中
成人したオイディプスは、デルポイで父殺しと母との結婚を予告されます。育ての親を傷つけまいとコリントスから遠ざかるものの、三叉路で老人の一行と争いになり、その老人を殺してしまう。相手が実父ラーイオスだとは知りませんでした。
『オイディプス王』で語られるのは、父を父と知って襲った事件ではなく、出自を知らないまま起こした争いです。ここで神託を告げるアポロンは、音楽だけでなく予言とも結びつく神でした。
杯の内側では、スフィンクスと座って向き合う
前5世紀のアッティカ赤絵式キュリクスには、柱上のスフィンクスと、旅人姿で座るオイディプスが描かれています。バチカン美術館の所蔵品で、「オイディプスの画家」と呼ばれる陶器画家に帰属します。

帽子をかぶり、手を顎へ近づける男。大きな翼を背負って彼を見下ろす怪物。戦いの絵ではなく、問いを聞く場面なのが面白いところです。赤絵式では、黒い背景から人物の赤褐色の形が浮かびます。
アポロドーロス『ビブリオテーケー』3.5.8では、四本足、二本足、三本足へと変わるものを問われ、彼は人間だと答えます。赤子、大人、杖をつく老人という一生を読み解いたのです。謎を解いて王位と王妃を得ることが、別の悲劇につながります。
アングル:明るい身体と、岩陰の怪物
アングル《スフィンクスの謎を解くオイディプス》は1808年の作品。ルーヴル美術館は、1827年のサロンの少し前に手直しされたと考えられる、と記しています。

オイディプスは片足を岩にかけ、上体を前へ傾けています。左上のスフィンクスは暗がりに半身を隠し、右奥には逃げるような姿の男が小さく見えます。手前下部の人の足や骨も、ここが命の懸かった問答の場だと知らせます。
注目したいのは、明るく大きな身体と、顔の前へ差し出す手の組み合わせ。鑑賞者は彼の身体をたどりながら、言葉で怪物に対抗する瞬間へ導かれます。柱を隔てて座っていた杯の図像に比べ、緊張が一人の身体へ集まるように見えます。
モロー:怪物との距離がなくなる
モロー《オイディプスとスフィンクス》(1864年、メトロポリタン美術館)では、怪物が男の身体に取りついています。二人の顔と視線が近く向き合い、問いかけは身体ごと迫るものになりました。

羽根の青灰色、腰まわりの緑、細長い赤い杖。岩場に囲まれた画面の中で、色と輪郭が二人を結びつけています。手前下部に見えるのは人の手や足で、同館は謎に答えられなかった犠牲者の遺骸と説明します。
アングルと比べると、理路整然と答える場面より、危険から身を離せない対面として読めるのではないでしょうか。ただし「爪傷は知性が欲望に勝った代償」といった意味まで、画面だけで一つに決めることはできません。
真相を知ることと、目が見えることは同じではない
『オイディプス王』は、王となった彼が先王殺しを調べるところから進みます。探していた人物が自分自身であり、妻が実母だったと知ったとき、イオカステは命を絶ち、彼は自ら目を傷つけます。
盲目の予言者テイレシアスが真相を告げ、目の見える王がそれを拒む。この対比は「見ること」と「知ること」のずれを考えさせますが、失明の理由や悲劇全体を一つの教訓だけで説明するのは避けたいところです。
フュースリ:息子を指す腕と、娘たちの腕
《ポリュネイケスを呪うオイディプス》(1786年、ワシントンのナショナル・ギャラリー)は、ソフォクレス『コロノスのオイディプス』の後半生を題材にした作品です。

白髪の父が伸ばす腕の先で、息子ポリュネイケスは身をそらしています。背景で両腕を広げるのがアンティゴネー、父の膝に頭を寄せるのがイスメーネーです。人物の同定は所蔵館の解説でも確認できます。
王位を取り戻すために助力を求めた息子に、父は兄弟が互いを殺すという呪いを返す。娘の腕は父と息子をつなごうとしますが、父の指は息子を遠ざけるように見えます。スフィンクスを前にした青年の知恵から、家族へ向かう老人の怒りへ。絵画が選ぶ場面によって、同じ人物の印象は大きく変わります。
後半生の舞台コロノスで彼を保護するのは、アテナイ王テセウスです。英雄どうしの物語も、こうして接点を持っています。
神託を告げる神、謎を出す怪物、王を支える家族。それぞれの役割をギリシャ神話大全でたどると、オイディプスの物語をほかの神々や英雄と結びつけて読めます。
原典と作品情報
ソフォクレス『オイディプス王』/アポロドーロス『ビブリオテーケー』3.5.7–9。作品の年代・所蔵・人物同定は、各画像下の美術館・画像出典を参照。

