2025デザイン史第1回授業概要

Sponsored Links
全15回の授業構成

デザイナーとしてのアイデンティティを培う基礎として、「デザインの概念」「デザインと表現技法」「デザイン行為・物と社会」という三つの視点を持ち「デザイン史」を通して理解できるようになることを目指します。これらの視点と知識をもつことの重要性の理解と共に、具体的にはデザインを行う上で必須となる「デザイン言語」「観察・分析・整理力」「発想方法」「表現技術、設計力」「思想、社会」についての幅広い知識を習得できる知識を習得できる基礎力の向上と獲得を目的としています。

本講義は、デザインの勉強を始める学生を対象とし「デザインの歴史的変遷」「基本的なデザイン用語の理解」更に「隣接学問領域との差異からデザイン領域特性の理解」を目指します。社会の変化、技術の変化に伴う「デザインの社会的な役割、表現技法の変化を考察」をすることで、劇的に移りゆく現代に新しいデザインを創造する上で必要となる基礎的な知識思考方法を、歴史を通じて身につける事を目的とします。

評価対象

授業態度:zoomのチャット欄を活用したディスカッション。
zoomのアカウント名に名前と学籍番号を必ずご記入ください。換算出来ない場合がございます。

振り返り:毎授業に授業感想の提出をいただきます。50文字程度で本授業に対するご自身の感想を述べて下さい。
全15回の授業感想の提出状況と内容の出来を換算します。

課題:夏休み課題です。提出の有無と内容の良し悪しで評価します。

小課題:全3回の小課題を設けています。授業の内容が身についているかの小さなテストを行います。3回のテストの成績を合算して評価対象とします。

about

らちまゆみ

静岡出身
多摩美術大学プロダクトデザイン卒業
デザイナー/アートテラー/日本工学院専門学校非常勤講師

著書『大人の雑学西洋画家事典』
監修『1日5分で名画をめぐる ごほうび美術の旅』

出演

美術館共演

美術指導

なぜデザイン史を学ぶのか

― なぜ「過去」に目を向けるのか ―

デザイン専門学校では、初回授業として「なぜデザイン史を学ぶのか」をテーマに取り上げています。

デザインは今この瞬間を生きる創造行為であり、未来に向けて進化し続けるものです。ではなぜ、私たちはあえて「過去」に目を向ける必要があるのでしょうか?


現代のデザインは、歴史の延長線上にある
TOYOTA

車はなぜあんな形になったのでしょうか。

すでに当たり前の形ですが、なぜあのような形になったのでしょう。確かに機能性を考えると適切な形に思えます。しかしライトがまるで目の様な形で両サイドに位置し、サイドミラーは耳のよう。口に見えるフロントグリル。顎のようなフロントバンパー。なにより運転席から車の頭までが思いっきり突き出しています。フロントにはエンジンが積まれているので、必要なスペースではありますが、しかし前方である必要は、機能的にはありあません。一体このデザインはどこからうまれたのでしょうか。

引用元
The Ford Model T

実はこの「車の顔」に見えるデザイン、ルーツをたどると“馬車”に行きつきます。

自動車が発明された19世紀末、人々にとって「乗り物」といえば馬車でした。最初の車は、いわば“馬を取り外してエンジンをつけた馬車”。そのため、当初の車のデザインは、馬車の構造をそのまま受け継いでいたのです。

御者が馬のすぐ後ろに座っていたように、運転席は車の一番前に配置され、馬がいた場所(=車の前方)にエンジンを載せるのが自然な流れでした。

この名残が、いま私たちが「車らしい」と感じる形の始まりです。

そして、技術が進化し、素材も軽くなり、エンジンの位置や形が自由に設計できるようになった今でも、私たちの“イメージする車の形”は、昔の記憶に強く縛られています。たとえば、フロントグリル。現代の電気自動車にはエンジンがないため、空気を取り込む大きな口=グリルは不要なはず。でも多くのメーカーは“それっぽい口”をわざわざデザインしているのです。

それは、車にとって“顔らしさ”が安心感やブランドらしさを与えると、みんな知っているから。つまり、車のあの形は、機能だけではなく、記憶と感情と文化のかたちでもあるのです。そう考えると、あのヘッドライトの“目つき”や、グリルの“口元”の印象にも、意味が感じられてきませんか?

デザインは、ただ便利なだけではない。私たちの感覚に語りかけ、歴史の続きを見せてくれる存在なのです。

私たちが日常的に目にする製品や広告、インターフェースの数々。こうした“今のデザイン”は、突然現れたものではありません。その多くが、過去の思想やスタイル、技術革新の積み重ねによって形づくられています。

たとえば、スマートフォンのシンプルな操作画面や、無駄を削ぎ落とした美しいフォルムは、20世紀初頭のバウハウス運動における「機能美」の理念と深く関係しています。つまり、現在のデザインを深く理解するためには、その背景にある歴史を知ることが欠かせないのです。

形にはルーツがある

デザイン史は、単なる年表や人名を暗記する学問ではありません。

なぜこのデザインの形になったのか、その問いを通じて、物事を多角的に捉える観察力は批評的思考を養う学びです。こうした力は、今後自身が作品を生み出していく際にも重要になります。

自分のデザインに、どのような背景や意味を込めるか。そのヒントは、先人たちが築いてきたデザインの歩みにこそ存在します。

優れたデザインは、見た目の美しさや機能性だけではなく、「誰のために、なぜつくられたか」といった社会的文脈や思想を内包しています。

歴史を学ぶことは、そうした“文脈を読む力”を養うことでもあります。自分の表現が、どのような流れの中に位置づけられるのか。どんな文化や思想への応答なのか。そうした視点を持つことで、デザインは単なる作業ではなく、より深いコミュニケーションへと進化します。

デザインは様々な要因で形成されています。その多くは事前リサーチの質に依存しています。
歴史を知り、過去の変遷を知ることはとても重要な要因になります

引用元

また過去のデザインには、現代でも活用できるネタの宝庫です。
自由度の高いデザインが求められた時代や、シンプルなものが好まれた時代などを反映しています。

未来をつくるための「過去」

デザインは未来を見据える行為である一方で、その礎は常に歴史にあります。

私たちはこれからの社会や生活に向けて新しい提案をする立場にありますが、その提案には必ず、過去への理解が伴っているべきです。デザイン史の学びは、「未来志向のための過去理解」であり、これからの創造活動を支える“土台”とも言えるでしょう。


Sponsored Links
Sponsored Links